上記の式で、総合倍率を⽩⾊光(λ = 550 nm)照明での有効倍率範囲、すなわち500 x NA < MTOT VIS > 1,000 x NA [3] に置き換えると、第⼀近似として、被写界深度は開⼝数の⼆乗に反⽐例することがわかります。
特に低倍率では開⼝絞りを絞る、つまり開⼝数を⼩さくすることで被写界深度を⼤幅に向上させることができます。しかしながら、開⼝数を⼩さくすると、解像度は低下します。
したがって、対象物の特性に応じて、解像度と被写界深度の最適なバランスを⾒つけることが重要です。 ⾼解像度の対物レンズ(⾼NA)と開⼝絞りを調整できる顕微鏡を使い適切に調整することで、サンプルに応じたパフォーマンスを発揮することができます。
実体顕微鏡における被写界深度と奥⾏き知覚
奥⾏き知覚とは、観察者から対象までの距離や、対象間の距離を認識する能力で、距離の知覚とも言われます。そのため片目ではなく両目で [4]観察することが重要で、左右の⽬の網膜上に別々に形成される像の間の視差は、奥⾏き知覚において重要な役割を果たします。
⼈間の脳のこの現象を⽰す例として、グリノー実体顕微鏡による試料の視覚化があります。 左右の光路のピントが合う観察⾯は互いにわずかに⾓度をなしています。 図2で示したように、網掛けされた部分全体にピントが合っているように⾒えるが、実際には左右どちらの眼で⾒ても、ピントは合っていません。
実体顕微鏡による被写界深度と解像度の向上
ライカマイクロシステムズは、実体顕微鏡の解像度と被写界深度の逆相関を回避、両立するための画期的なFusionOptics[5]技術を開発しました。 観察者が接眼レンズを覗いている間、⽚⽅の⽬には、解像度が⾼く被写界深度の浅い像、同時に、もう⽚⽅の眼は解像度は低いながらも、被写界深度の深い像を人間の脳に送ります。
⼈間の脳は、2つの別々の画像を、より⾼い解像度と被写界深度の両⽅を特徴とする1つの最適な全体画像に組み合わせることができます。